野菜は“ピンとしてる”か?|野菜の使い方帖 vol.04


[organ]紺野真さんに教わる、
選び方の基本
全4回にわたってお届けしてきた「野菜のつかい方帖」。 最終回となる今回は、「野菜の選び方」がテーマ。案内人はもちろん、西荻窪の[organ]、三軒茶屋の[uguisu]のオーナーシェフ・紺野真さん。
香りや食感、皮に宿る個性まで。これまでの回では、調理や保存、再活用の工夫を通して、野菜をもっとおいしく楽しむためのヒントを教えてもらってきた。そして締めくくりに紺野さんが語るのは、“料理の前の一歩”、いい野菜と出会うための目のつけどころ。スーパーでも実践できる、野菜の見極め方についてポイントを教えてもらった。
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「ピンとしてるか、ですね。張りがあって、生命力を感じる野菜がいい」
ぱっと見たときに“元気があるかどうか”。これが、紺野さんの判断基準。しおれたり、萎
びていたり、乾いたりしていないものを選ぶのが基本だという。
「アスパラガスなら切り口がみずみずしいか。ごぼうは泥つきで白っぽいか。トウモロコ
シならずっしり重いか。パッと見て、どこかに“勢い”があるかを見るようにしています」いかにも当たり前のようだけど、実はこの“見た目の元気さ”こそ、野菜とちゃんと向き合
うための最初の一歩である。 -
「見た目の小さなサインに、鮮度の差が出ます」
たとえば、トウモロコシのヒゲが茶色くなっていると、収穫から時間が経っている証拠。
「ごぼうに見られるピンク色の断面も、なるべく避けたほうがいい。やや古くなってる可能
性があります。あと、洗いごぼうより泥つきの方が、香りが残っていて断然おすすめです」
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どうやって野菜を選ぶ?「いい野菜を見てから料理を考えます」
スーパーでは、料理を先に決めて買い物するよりも、その場で野菜に出会ってから考えるスタイル。まずは旬の野菜に目を向けてみる。ピンとくる一本があれば、それがその日の料理のヒントになる。「『これはシンプルに焼こう』『炭火が合いそう』『皮ごと蒸したい』って発想が自然と広がってきます。」

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「ピンとこなければ、その日は買わなくてもいいんです」
食材を選ぶことは、料理のスタート地点。だからこそ、紺野さんは無理に買うことはしな
い。「いい野菜に出会えなかったら、今日はやめておこう。それも、きっとちゃんとした
“選ぶ”という行為ですよね」いい野菜に出会えなかった日にも、野菜を味わう手はある。たとえば、こんな一杯を食
卓に。

「青森産ごぼうと舞茸と国産野菜のぽかぽか和風生姜スープ」青森県産のごぼうに、舞茸や5種の国産野菜を合わせた和風スープ。生姜の風味がほんのり効いた、体の内側からやさしく温まる一杯。
野菜をみつめる。そんな感覚を持ってスーパーを歩くと、買い物が少しだけ楽しくなるかもしれない。紺野真さんと一緒にめぐってきた「野菜のつかい方帖」。明日の台所で、またひとつ野菜と向き合うヒントになりますように。

紺野真 organ / uguisu オーナーシェフ
1969年東京都生まれ。高校を卒業後、カリフォルニア・ロサンゼルスに移住。帰国後、カフェやビストロで経験を積み、2005年に三軒茶屋にワインビストロ「uguisu」をオープン。2011年には西荻窪に「organ」を開店。2023年11月には、麻布台ヒルズに開業した「Orby Restaurant」のヘッドシェフに就任。著書には、『なぜかワインがおいしいビストロの絶品レシピ』(サンマーク出版)や、2025年4月には『uguisu/organ 紺野 真が作る 野菜のひと皿料理』(グラフィック社)を発売。