他者と共にセルフケアをする大切さ。|永井玲衣さんとスープについて考えてみる vol.03

永井玲衣さんと
スープについて考えてみる
スープは、身体をあたためるだけの料理ではありません。誰かと囲んだり、ひとりで静かに飲んだり。忙しさの合間に、ふっと心をゆるめてくれる。そんな日々のなかのスープに、私たちはどんな想いを託しているのでしょうか。哲学者・永井玲衣さんに、「スープ」と「問い」について伺いました。3つのエピソードを通して見えてきたのは、「食べる」という行為の奥行きと、他者とのつながりのかたちです。

他者と共にセルフケアをする大切さ。
ここ数年でよく耳にするようになった“セルフケア”という言葉。自分で自分を労わるという意味が広がる中で、「他者を介しながら自分をケアする」という、もうすこし広い意味でのセルフケアが広がるといいと永井さんは話す。
「今の社会では、自分のことは自分で何とかしなければならないという考えが強くなっている気がします。そうしたセルフをケアすることにはすごく意味があると考えつつ、他者と共にケアをするということが、もっと叫ばれてもいいんじゃないかなと。
たとえば対話の場にいると、いろんな人の想いが自分のなかに流れ込んできて、自分のことを考える余白すらなくなることがあります。決して逃避ではなく、他者の中に身を置いてみる。そうした自分を手放す行為が、実は自分自身を楽にしてくれるときもあるのではないでしょうか」

そんな永井さんも、日々の忙しさに追われて中々セルフケアができないときがあるという。そんな時「野菜をMOTTO」が力になってくれそうだと語る。
「地方で哲学対話をするときは、終える頃にスーパーやコンビニが閉まっていることも多くて…。そんなときに『野菜をMOTTO』を常備しておくと便利ですよね。今日いただいた「北海道産皮つきかぼちゃのほっこりスープ」は塩味がちょうどよく、疲れた身体に染みる味でした。「静岡産『あかでみトマト』で煮込んだ7種野菜と3種の豆が甘み豊かなミネストローネ」は野菜がゴロゴロ入っていて満足感があります。常温保存できるのも、移動の多い私にとってはすごくありがたいです」
『野菜をMOTTO』を食べるのも、他者からのケアを感じられる営みの一つだ。
「たとえば野菜を育てた農家さんや、商品を作るためにさまざまな研究を重ねた開発者の方の想いがこの一杯に詰まっている。そうした『他者からのケア』を感じながら、自分自身をケアする。そんな営みが、もっと広がっていけばいいなと思います」

永井さんはこれまで全国各地でのフィールドワークを行う中で、食との向き合い方が大きく変わるような出来事に出会ってきました。
「大阪府の西成にある釜ヶ崎という地域に、定期的に通っています。表現と出会いの場をつくっているアートNPO『ココルーム』という場があるんですね。喫茶店やゲストハウスもしているのですが、夜になったらスタッフやゲストのみんなでご飯を食べる。大人数で同じ大皿を囲みながら料理を食べていたときに、そこのスタッフの方が私に駆け寄ってきて、『一緒に食べてくれてありがとう』と言ったんですよ。その言葉に私はハッとしたんです。
食べてもらえると嬉しい。食べさせてもらえると嬉しい。食って、どちらか一方だけのものではなくて、そこにあるのは『あなたを傷つけたくない』というケアの感情なんだと、肌でわかった瞬間でした」
野菜を育てた人、料理を作る人、共に食卓を囲む人。食という営みのなかには、目に見えない他者のまなざしがいくつも重なっている。そんなケアを感じ取ることが、日々を整え、私たちの食をきっと豊かにしていくのだろう。

永井玲衣
哲学者。人びとと考えあう場である哲学対話を全国で開く。せんそうについて表現を通して対話する写真家・八木咲とのユニット「せんそうってプロジェクト」、Gotch主催のムーブメントD2021などでも活動。著書に『さみしくてごめん』『水中の哲学者たち』『世界の適切な保存』。